「不登校当事者による多様な進路交流会」レポート⑤ 〜保護者の経験談 vol.2〜
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「不登校当事者による多様な進路交流会」レポート⑤ 〜保護者の経験談 vol.2〜

この記事では、2024年11月4日(祝)に三軒茶屋しゃれなあどホールにて行われた「不登校当事者による多様な進路交流会」の第2部でお話をしてくれた保護者の皆さんの経験談について、まとめています。

保護者の皆さんには、不登校当時のお子さんの様子や現在の様子、その時に保護者として意識していたことや考えたこと、どのような対応をしたのか、を中心にお話を聞きました。また、その経験を経て、同じように悩む保護者の方へのメッセージなどもいただきました。

vol.2の今回は、4名の方のお話を掲載します。

 

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Staff member avatar Dさん
今高1と高3の子どもがいる母です。時期は別々ですが、2人とも小学校の頃から不登校です。

1人は不登校から引きこもりになりましたが、今は元気に高校に通っています。引きこもり中は、知り合いの保護者の方がオンラインでゲームの相手をしてくれたり、引きこもりなら引きこもりなりにできることを、一緒に考えたりして支えてくれました。おかげで10年程かかりましたが、今は元気にしております。

 皆さんもそうだと思うんですけど、色んな情報が入ってきて、色んな人が「ああせよこうせよ」とか言って振り回されることもあったり、どの情報がいいのかとか、どれが自分の子に合うのかとか分からないことがいっぱいあったりすると思うんです。その中で私が心がけたのは、とにかく毎日子どもが1番楽しいこと、1番幸せなこと、親も1番楽しいこと、1番幸せなこと、をなるべく毎日することです。親も子どももすぐには変われないので、すぐに変化を求めない。私もすぐには変われない、子どももすぐには変われない。でも日々親子ともに楽しく過ごせるものを探す。毎日ゲームが楽しいならゲームでいい、毎日Youtubeで楽しいならYoutubeでいい。一時期ディズニーランドが好きって言ったので、じゃあ年パスを買って毎日ディズニーランド行ってもいいじゃないか。スキーに行けるようになったら、じゃあ毎日スキーに行ってもいいじゃないか。なんなら夏は南半球に行ってスキーに行ってもいいじゃないかと。実際はそんなにお金はないのでできませんでしたが、それくらい毎日とことんスキーをしろと。絵本作家の五味太郎さんの言葉を借りると、「お前らとことんがまだ中途半端過ぎる。もっととことんやればお母さんもゲームを認めてくれるぞ」ということです。

ちなみに私は、上の子は学校に行った方が合っている子だと思ったので、学校に行く方向で応援しました。下の子は、学校に行かない方が合っている子だと思ったので、学校に行かない方向で応援しました。

 こんな感じで、私も借りましたので、色んな人の手を借りながら皆さんが毎日幸せになるように、是非頑張りましょう。

 

Staff member avatar Eさん
我が家には娘が2人おりまして、22歳の長女と先日17歳になった次女です。2人とも起立性調節障害という病気でして、私自身は起立性調節障害についての周知と認知と理解のための啓発活動を行っております。

 娘たちは確かに病気で学校に行くことができない時期もあったのですが、長女は都立のチャレンジスクールの2部に通い、5年間かけて高校を卒業して今大学3年生です。この夏には彼女がずっと目標にしていた短期留学という夢も叶えることができました。留学できたことが素晴らしいわけではなくて、体調が悪い中でその夢を持ち続けて、それを叶えられるだけの体調まで回復したというところが良かったなと思います。次女はお姉ちゃんが卒業した高校の同じ2部に通っていますが、毎日通うことができないので、自主的に週3日登校を目指して頑張っています。単位制高校だからこそできる選択です。

 お伝えしたいのは、子どもたちが生きていく時代は、私たち親が生きてきた時代とは全く違う価値観と選択肢がある、生きていくものさしがあるということかなと思います。それぞれの子どもたちに合った学びや学びやすい道、生きやすい道、どんな道を選んだっていい、どんな未来だって諦める必要がないということをお伝えしたいなと思います。私自身は、急がず、焦らず、諦めず、自分らしくで大丈夫、ということをお伝えしています。学校に行けない、ということで親御さんは本当に不安になったり、焦ったり、学校に行けないことと向き合っている子どもたちも、色んな葛藤を抱えていると思うんです。子どもたちには、もし仮にみんなと同じことができなくて、自分を責めたり、自分を諦めたりしていることがあったとしても、「私はそうは思わないよ」「あなたたちにはどんな未来も待ってるよ」「生き抜く力あるよ」って伝えたいと思いますし、親御さんには本当にそれぞれが生きやすい道を選んでいっていい時代である、ということを知っていただけるといいかなと思います。

 病気であっても病気でなくても、学校に行けていても、行けなくても、生まれてきた時と同じ、「生まれてきてくれてありがとう」って、その手に抱いた時と同じあの愛おしくて大切な我が子であることに変わりはないと思いますので、本当にそのことを思いながら、毎日子どもたちといかにハッピーに過ごせるか、そんな風に考えていただけたらいいのかなと思います。ありがとうございました。

 

Staff member avatar Fさん
今高校1年生の通信制の学校に通っている息子がいます。息子は私立の中高一貫の男子校に通っていました。良くも悪くも伝統校なので、昭和っぽい雰囲気というか一部体育会系っぽい雰囲気がかなり色濃くある学校でした。そういった中で本人が馴染めなかったのか、中1の3学期からほぼ完全に不登校になりました。

 我々親として心がけたことは学校とはコミュニケーションをちゃんと取っていこうということです。中1の時の担任の先生が、かなり昭和っぽい体育会系のマインドの先生で、その先生との相性は最悪でした。不登校となった中1の3学期からすぐに学校には色々と相談して、中2になる時には、割と柔軟に対応してくださる先生のクラスにしていただきました。それで親は学校に2、3ヶ月に1回くらいですかね、ちょこちょこ行って先生に会ったりして、状況などは共有していました。ただ本人がどうしても学校に足が向かないということで、最終的に高校への内部進学は諦めて、外部受験しようということにしました。それで調査書などどんな書類が必要かということも、学校の先生とこまめに共有をして、協力を求め、結果すごく丁寧に対応して頂けて、本当に良かったなと思いました。これも早い段階から、学校とざっくばらんに話せるような環境を作って頂けたのがラッキーだったなと思います。

 学校見学などは中3になってからこつこつ行き始めて、色々紆余曲折あったんですけど、トータルで10校前後見ました。結局通信制ですが通学がメインの学校に行くことにしました。願書提出期限の2、3日前に息子がここに行きたいと急に言い出しまして、非常にびっくりしました。慌てて学校に見学させてくれと連絡して見学させてもらったら、非常に良い授業をやっていたんです。これならいいな、と親としてもしっくり腹に落ちました。それに本人がやりたいということを今まで明確に言ったことがなかったので、これはいいなと思って、素直に親としても応援する気持ちになりました。それで今は毎日通っています。最近では、大学進学に向けた勉強をしたくなったようで、学校とは別に塾に通うようになって、楽しんで勉強をしています。

 

Staff member avatar Gさん
今までのお母さんとお父さんの話を聞いて、皆さん通信高校ですとか、定時制高校という形で、進学が今現在できているということ、非常に羨ましいなと思っています。

うちの息子は今、18歳で高校3年生の年になります。都立高校に入学したものの、結局行けなくて 1年で退学ということになりました。息子は今思い返せば保育園のころから、たくさんの人がいる場所(学校)が得意な子ではなかったですね。すごく大人しくて、みんなが「わーっ」と騒いでいるところがちょっと苦手という子でした。

小学校に入学してもなかなか教室に入れない、など色々あったんですけども、決定的に行けなく なったのは、小学校4、5年生の時でした。男の子が腕力などがついてきたところで、力を見せるっていう雰囲気があって、うちの子は小さかったし、力もなかったので、とてもかなわなくて。そこでちょっといじめのような形に本人は受け取ったのかもしれないんですけど、そこから友達との交流や付き合い方をどういう風にしていいのか迷って分からなくなっちゃったようなところがありました。

中学1年生は、なんとか頑張っていたんですけれど、2年生の時にコロナもあり、そういう色んな事が重なって、学校に行けなくなりました。本人は「学校になぜ行けないのか」「どうして勉強しなきゃいけないのか」「どうしてみんなで同じ黒板に向かって座って勉強しなきゃいけないのか」など、いろいろと言っていました。何もかもわからない・・・そんな状態が中学2年生位まで続いていたと思います。

中学3年生になって、いよいよ進学どうする?となった時に、「なんでやらなきゃいけないんだろう」「僕は何をしなきゃいけないんだろう」「進学って何だろう」「進路を決めなきゃいけないのはどうしてだろう」とかなり迷った様子でした。でも、チャレンジ校(※注1)だったらもしかしたら行けるかもしれないと、六本木高校を受験しました。それから作文や面接の練習を一生懸命したものの結果、落ちてしまい大きな挫折を味わってしまいました。その後定員割れした普通の全日制の高校に滑り込みでとりあえず入りました。とりあえず入ってしまったので、もうそこでは何の目標もなければ行く意味も分からない、そしてたくさんの学生との学校生活、通学するときに電車に乗れば人は多く、自転車で行けば車や人に非常に不安を大きく感じるようでした。そして、今、家にいるという状態にあります。

でも、今日は、そんな息子のために力をくれた人がいっぱいいます。まずは、こぐまの会の皆さんです。息子を暖かく迎えてくれて、息子も自分を認めてくれる大人がいるっていうことにとても喜びと安心みたいなものを感じたと思います。

そのこぐまの会でご紹介頂いた、世田谷泉高校の沖山校長先生。校長室にいつでも来てもいいですよと言って頂きました。息子と話をして、「勉強するってどういうことなんだろうね」とか「学校ってどうなんだろうね」という話をしてくださいました。

やはりこぐまの会でご紹介頂いた、元・世田谷区教育総合センター長の平沢さん。その当時、息子が絵を描くようになっていたのですが、絵について何の知識もない、ただ絵の具を使って描いたその絵を、平沢さんが100%全力の力で褒めてくださって、「天才だ、君は天才だ!」って言ってくれました。息子は「きっと平沢さんは僕を励ますために言ってるだけだよね」と言いながらも嬉しくて嬉しくて息子は絵を描くことが自分の自信のアイテムとなりました。自分が何も分からないのに描いていた絵を「いいね!」と言ってくれる人が1人2人って増えていったことが、彼の生きる力になったかなと思っています。今日このチラシにも載せて頂いてたんですけども、この絵を描いたのも息子です。

こぐまの会の人たちの中で彼が自分を受け入れ認めてもらうという経験を少しずつ積んだこととか、平沢さんや沖山先生などに話をしてもらって、自分を認めてくれる方と出会ったこと、他にも今サポートしてくれる方々がいるんですけど、やっぱり私だけではだめでした。社会にでるっていうことを踏まえる上で、第3者の大人が自分を認めてくれるということがすごく大きな力になってると思います。息子は今、高卒認定を受けると決め、そのサポートしてくれる人と今日も「僕はそのための参考書など買いに行く」と言って、午前中三軒茶屋に買いに行っていました。

これまで学校というところに馴染めなかった、でも今はちょっと「大学ってどんなところなのか」と興味があり、小さな夢を持っているようなところもでてきました。高校は結局行けないで終わってしまうと思うんですけど、彼が学ぶ、学習するということにちょっと目を向けたり、その先の社会に出るということに対して、希望を持てているように見えてくるようになりました。私は色んな大人と関わる、色んな人と関わるということができたことが本当に良かったなという風に思っています。皆さんに感謝したいです。ありがとうございました。

※注1:主に小・中学校での不登校の経験や高校での中途退学の経験により、これまで能力や適性を十分に生かしきれなかった生徒が、自分の目標を見つけ、それに向かってチャレンジする高校です。
昼夜間の定時制・総合学科・単位制の高校で、自分のライフスタイルや学習ペースに合わせて各時間帯(午前・午後・夜間の三部)を選んで入学できます。(東京都教育委員会HPより引用)

 

いかがだったでしょうか。今回は4名の保護者の方の経験談を掲載させていただきました。

一人一人のお子さんの状況や様子、性格などに合わせて、たくさんの選択肢の中から進む道を選ぶことができること、その道がもし難しくなっても他にも道はたくさんあることなどが伝わるお話がたくさんありました。保護者の方はお子さんのことを考え、思い悩む時もあるかもしれませんが、似たような経験をした保護者の方や一緒に考えてくれる機関などを頼ってみるのも良いのではないでしょうか。
本サイトでは世田谷区内の様々な保護者の会や子どもの居場所などの支援情報を掲載しています。また、様々なイベント情報も掲載しています。ぜひご覧ください。

 

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