
「たんぽぽの会」レポート
2025年8月26日(火)、桜丘区民センターにて行われていた「たんぽぽの会」を訪問しました。この記事では、この日のたんぽぽの会の様子と、たんぽぽの会に関わる方々のお話の内容をご紹介します。
〜こちらもあわせてお読みください〜
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たんぽぽの会は、世田谷区のひきこもり等居場所補助事業による助成を受け、こぐまの会が月に1回運営している、不登校の子どもを持つ保護者のための会です。世田谷区による不登校保護者のつどいで長年コーディネーターをされていた奥島さんと一緒に、その日に参加した保護者それぞれの悩みを共有し、できることをみんなで一緒に考え、一緒に作っていく会と位置づけられています。
この日の会場は桜丘区民センターの第2会議室。入口の扉には「たんぽぽの会」という貼り紙がありました。
扉を開けると、すぐ近くに受付があり、運営を担当されている伊吹さんが出迎えてくださりました。その奥では、輪になるように置かれたテーブルを囲み、保護者9人ほどと奥島さんが座ってお話をしていました。会の途中の時間から来室した方も4人ほどいて、どの方も到着後すぐに空いている椅子に座ってお話の輪に加わっていました。
会は全体を通して、話したいことのある方が全体に向けて話をする形で進んでいました。ひとりの方が自身のお子さんの状況や学校の先生や他の家族との関わりについて話すと、奥島さんをはじめ他の参加者全員がそれを聞き、受け止めていました。その後、他の参加者が自身の経験を語ったり、話を聞いて感じたことを伝えたりしている様子が多く見られました。
参加者のお話を受け、奥島さんが話をしている方やそのお子さんの今できていること、素敵な部分に焦点を当て、それを言葉にして伝える場面も多くありました。また、会の中で奥島さんから、「家に帰ったら笑顔になれるように、今思いを吐き出しておきましょう」「事情はそれぞれですが、辛さはみんな同じ。そこをお互いに支え合いながらやっていくのが、たんぽぽですね。」という言葉もありました。
会場が使用できる時間ギリギリまでお話が続き、会場を出た後も奥島さんや他の参加者とお話しする方が多くいらっしゃいました。その様子から、たんぽぽの会がみなさんにとって大切な心の拠り所になっていることが感じられました。
たんぽぽの会で参加者のお話を聞いていらっしゃる奥島さんと、たんぽぽの会への参加を続け、運営にも携わっている安藤さん、伊吹さん、中山さんにお話を伺いました。

ーーたんぽぽの会が始まった経緯をお聞かせいただけますか?
世田谷区の不登校保護者のつどいでコーディネーターをしていたのですが、当時は保護者同士がつながる居場所として開かれていました。その後に行われたつどいの方針変更を受け、保護者同士の横のつながりや心の交流を大切にできる場を存続させたいと考え、この会を始めました。
母体は世田谷で親の会として活動するこぐまの会ですが、こぐまの会の活動の一部というよりも、奥島さんや不登校の子を持つ保護者が共に過ごす居場所として独立して認識しやすいよう、あえて別の名前をつけることになりました。そこで、大地に根を張り、種を遠くまで運ぶたんぽぽのようにこの活動が地域に広がってほしいという願いを込め、「たんぽぽの会」と名付けました。
ーーたんぽぽの会は、みなさまにとってどんな場ですか?
伊吹さん)苦しい気持ちを捨てる場所です。我が子の話をしても理解されず同情されることが多かったのですが、この会では共感し合うことができました。この会が終わる時には気持ちが軽くなり、「家族に優しくしよう」と思えます。結局家に帰るとそううまくも行かない時もありますが…
安藤さん)たんぽぽの会で話をして、自分のダメな親の部分も含めて受け入れてもらうことによって、家で子どもを受け入れる余裕が生まれるんですよね。
中山さん)「安心の場所」ですね。不登校の子を持つ親としての先輩がたくさんいるので、今の自分の位置が分かって将来の見通しを持てたり、「こんな未来もありうるんだ」と希望を持てたりします。
安藤さん)我が子が今不登校の状態にないとしても、他の方の話を聞いていると「自分もあの時そういう気持ちだったよね」と振り返って気付くことがたくさんあります。子どもの状態も親の気持ちも日々変化しますから、「完全に卒業」というわけではないんですよね。
伊吹さん)年月を重ねるにつれて、よく参加している親とその子どもの経過も見られるようになってきています。進路について他の保護者から話を聞いていた方とそのお子さんが、他の親子に自分の経験を語る側になっている、ということが既に起きているんですよね。
奥島さん)私は私で、生きることに真摯に向き合って語られるみなさんの言葉から学ばせてもらっています。私にとっても大切な場所です。
他のみなさん)奥島さんのひとつひとつの言葉が、私たちの癒しです!
ーーこのレポートを読まれた方へ、メッセージをお願いします!
伊吹さん)心の荷物を下ろしたい方はぜひいらしてください。いっぱい泣いて、笑顔になれる場所です。
安藤さん)お子さんが学校に通い始めたり、進路を決めたりすると、「うちの子はもう不登校ではないから、参加してはいけないのでは?」と思う方もいらっしゃるようですが、そうした方にもぜひ来ていただきたいです。そういう方の経験談を聞きたい方も多いですし、たんぽぽの会は、苦しかった時期をともに乗り越えた保護者が、気持ちを分かち合える居場所でもあるので。
奥島さん)保護者だけでなく、子どもに関わる様々な立場の方にぜひいらしていただいて、お話に加わっていただきたいです。
今回は「たんぽぽの会」を訪問しました。これからも、保護者の方同士がお話できる場やお子さんと一緒に参加できるイベントのお知らせをしてまいりますので、ぜひご覧いただき、ご自身のタイミングで足を運んでみてください!