「学び舎トーカ」訪問レポート
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「学び舎トーカ」訪問レポート

 2025年8月、世田谷区の東急田園都市線・用賀駅の近くにある「学び舎トーカ 用賀中町キャンパス」に伺い、トーカのみなさんと一緒に過ごしてきました。この記事ではその様子をレポートします。

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★「学び舎トーカ」の情報はこちら

 「学び舎トーカ」は、世田谷区の3キャンパスを含む計4キャンパスを構える「ニュースクール」です。今回はそのキャンパスの1つで、東急田園都市線・用賀駅から徒歩3分ほどのところにある用賀中町キャンパスを訪れました。

 用賀駅からすぐの商店街にある建物を見上げると、「学び舎トーカ」という文字が貼られた窓が見えました。通りに面した入口にあるエレベーターで4階に上がると、学び舎トーカの玄関があります。

 扉を開け、靴を脱いで中に入ると、1つの大きな部屋が広がっていました。その中が、遊び道具やクッションが置かれたスペース、座ってくつろげる大きめのソファがあるスペース、机とイスが並んだスペースなどに分かれており、キッチンも備わっています。

 その空間で、小中学生10人ほどと「クルー」と呼ばれる大人のスタッフ3名が過ごしていました。話したり遊んだりする子どもの声が飛び交う活気のある雰囲気でしたが、学校の夏休み期間であったこともあり、この日は1日に来室する子どもの数が少ない方なのだそうです。この日いらしたクルーは、キャンパス長のさっちゃんを含め3人でした。俳優として公演を控えているクルー、梅会社の社長を務めているクルーなど、そのバックグラウンドは実に多様です。

 開室時間は4コマに区切られていて、来てから帰るまでの過ごし方を自分で決め、紙に書き込む仕組みになっています。ゲームをしてもよいのですが、1時間までとルールが決められています。取材を始めたのは、2コマ目と3コマ目の間の昼休みの時間で、キャンパス内で沸かしたお湯を入れたカップ麺を食べている子もいれば、食べ終えておしゃべりしたり遊んだりしている子もいました。

 12時半になると、キャンパス長のさっちゃんが「集合!」と声をかけました。学び舎トーカでは「冒険の達人」というイベントを定期的に行っていて、子どもたちが行きたい場所に出かけ、学びを深めています。この日は9月にどこへ行くかを話し合っていました。子どももクルーも一緒になって案を出し合い、開催期間や入場料を調べ、日程や費用の見通しを立てていました。最終的には多数決で行き先が決まっていきました。

 午後の3時間目には、探究学習に取り組む子どもたちの姿がありました。世界遺産について調べて発表した子、ハイチュウを溶かして風船のように膨らませる実験をしている子、アプリで考えたインテリアを発展させて実際に家具を工作している子など、内容はさまざまです。合宿の行程をクルーと一緒に考えている子もいました。壁には、それぞれの探究テーマや取り組みの様子が掲示されています。

 この日は、学び舎トーカの代表・サマーが「近くの畑で野菜を収穫しよう」と声をかけ、一緒に行きたい子を募っていました。この畑では保護者の協力を得ながら野菜を育てているそうです。さらに、オンラインや対面で保護者同士が交流できる場も設けているとのことでした。

 キャンパス長のさっちゃんにお話を伺いました。

 もともと学校をつくりたいと思っていたんです。学校で教員として働いていた頃、これまでと違うやり方や新たな学びのあり方を実践することの難しさを感じました。今の学校教育では子どもを特定の理想像に近づけることが目指されているように感じたけれど、「もっと多様な生き方や教育のあり方があるはず」と思っていたんです。そんな時にサマーと出会い、「子どもの居場所」と「オルタナティブ教育」をかけ合わせた「ニュースクール」を立ち上げようと考えるようになりました。

 はい。北欧では、日常的に「あなたは今、何をしたい?」と子どもに問いかけているんです。子ども自身が学びの主人公になっていると感じました。私もそういう学びの場をつくりたいと思っています。

 そういう子も多いので、まず好きなものをヒアリングします。その上で、探究のテーマや方法をクルーから提案することもあります。私自身コーチングを学んでいるので、対話を通して子どもの興味を引き出すようにしています。その子が一歩頑張ったらできて、学びを得られる探究にどうつなげるか。クルー側の引き出しの多さが問われますね。

 月に2回、食堂を開いています。月1回平日に行うものは利用している子どもと保護者が対象で、もう1回は週末に行って地域の方にも開放しています。この場が地域の様々な人と出会うきっかけになっています。「冒険の達人」というイベントでは、事前にどこに行くかを話し合い、子どもたちの行きたい場所に行くものです。最近はレジャーが多くなってきたので、テーマを絞ることもあります。それから「究め人シリーズ」。いろんな職業の人を招いてレクチャーをしてもらっています。
 トーカでの学びはとにかく「経験主義」なんです。子どもが経験して、自分なりに見出したことは、その子にとっての正解だと思っています。

 トーカとして共通している文化があるとはいえ、来ている子どもやキャンパス長の思いによってキャンパスごとの色も出ていると思います。

 私は「地域とつながりたい」という思いが強いです。例えば、別の地域の地域おこし協力隊とつながって、その地域に子どもたちと行こうとしています。旅好きの子の探究から広がったご縁です。また、近くのインターナショナルスクールの高校生が「英会話を教えたい」と言ってくれていて、そうした連携も進めています。子どもたちには、いろんな生き方をしている大人がいることを知ってほしいと思っています。

 「とりあえずやってみよう!」という精神で、もっといろいろな地域とつながっていきたいです。そして、子どもの学びにはもっと多様な選択肢があるという認識を社会に広めたいです。子どもたちには「自分はこれが好き」「自分はこういう人だ」という感覚を持って卒業してほしいと思います。

 生き方に正解はありません。悩んでいることも大事なことです。自分を主人公にして生きていきましょう!

 取材をさせていただいて、安心してただ居ることのできる居場所であると同時に、それぞれのペース・形で学びを広げられる場でもあることが、学び舎トーカが「ニュースクール」たる所以なのだと実感しました。また、子ども・クルー・保護者・地域の人といった立場に関わらず、誰もが自身の信念ややりたいことを大切にしながら関わり合うことで、トーカでの人との出会いや日々の出来事のひとつひとつが学びになっていくと体感できました。

 今回は、世田谷区内の「学び舎トーカ 用賀中町キャンパス」の日常の1コマをお伝えしました。これからも、子どもたちが過ごす世田谷区内の居場所の日常をレポートしていきます!ぜひご覧いただき、「行ってみたい」「もっと様子を知りたい」と感じた場所があれば、ご自身のタイミングで足を運んでみてください!

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